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十字路の上で
第1章 誰でもいいから

「時枝にノート借りればいいだろ?お前らいつも一緒じゃん」
「今日の1限は邦彦のとってない講義なの!」
「そりゃ悪かったな」
自分から言っておいて、どうでも良さげに欠伸をしながらの返事にまたイラっとするが、今は時間がないのでしょうがない。
「あたし先シャワー借りるからね。
二度寝しないでよね」
そう言って、服を持って足早に浴室に向かった。
今や当たり前のように彰人の家の浴室に置いてある自分用のシャンプーとトリートメント。
他の女の子には時々来る妹の物と言ってあるらしい。
堂々としてるほうが疑われない賢い嘘。
熱めのお湯でシャワーを浴びる。
あたし達はいったい幾つ嘘を重ねて生きて行くのだろうか…。
長い髪にタオルを巻いたまま部屋に戻ると、部屋着のスウェットズボンだけを履いて上半身は裸のままの彰人がテーブルにパンとコーヒーを用意してくれていた。
長い足を組んで座りコーヒーを飲む姿は、本当に絵になる。
「俺もう先に食ったから」
「うん、ありがと」
入れ違いで彰人が洗面所に向かう。
その間にパパッと朝食を頂いて、バッグからメイク道具を取り出し急いで顔を作る。
ベースメイク、眉、シャドー、ライン、マスカラ、チーク、グロス。
いつもはローライトやハイライトを入れ、シャドーも複数色使ってグラデーションを作るが、今日は時間がないので必要最低限だけ。
点数をつけるなら45点くらいのメイク。

