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君はカノジョ
第3章 彼女の声
企画部の、半田君だっけ? 抱きしめるだけで手を出さないなんて、純情だなぁ。オレには真似できないね」
「それは…、多分ちゃんと、想ってくれてるから…」
「そんな相手を中途半端に付き合わせて、沙耶子は悪い子だね」
「……」
すぐに昨日の事だとわかった。
「悪い子にはお仕置きが必要かな」
わかったところでどうにもできない。
衣擦れの音がする。
さすがにたまらなくなってその場を動こうとした時、金原さんの悲しげな声が聞こえて足を止める。
「…どうして」
「雨だから妻が迎えに来てほしいって。だから今日はこれでおしまい。おあずけだよ」
「いや」
「さっき言っただろ? 悪い子にはお仕置きだよ。駅までは送るから、服を着なさい」

ガンッと音がして目の前に火花が散った。ドアが急に開いて思い切り俺の顔面に当たったのだった。
しまったと思ったけどもう遅い。目を開ける。ドアを開けて立っていたのは、隣の部署の部長だった。
大人の色気があると女子社員に人気の小田部長。愛妻家で通っていて、若い女の子の誘いなんかはさらりとかわす。その余裕の態度がまたいいのだと女の子たちが噂しているのを聞いたことがある。

金原さんの相手は、小田部長。
しかも、不倫だ。
俺は驚き過ぎて声も出ない。
桃子さん~弟なんかじゃ全然ないじゃないか。むちゃくちゃリアルに不倫じゃないか。職場の上司と誰もいない会社で、なんて…。
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