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君はカノジョ
第5章 君は彼女
時計を見るともう11時を過ぎていて、雨も強くなってきていた。
タクシーを呼び二人で乗り込む。橋の向こうの駅まで15分ほど、ずっとどちらも黙っていた。
車内に激しさを増す雨の音とつけてあるラジオ、時々鳴る無線の音を聞くともなく聞いていた。
俺はもうほとんど興味もなくなったように彼女の事を感じていて、昨日までの恋心やさっきしたセックスも夢みたいに思えた。
金原さんは隣でスマホを見ているようで、部長に連絡でもしているのだろうかと考えるがすぐどうでもよくなる。ただ暗い車内でその光がまぶしいなぁと思うだけだ。

駅に着き金原さんが降りる。
俺は自宅まであとちょっとだけど、降りるのも億劫なのでそのまま乗っていくよ、と告げる。金原さんは、そう、と言って料金の半分を置いて行く。
駅に消えていく彼女の姿を見送りもせず車を出してもらう。

疲れた、と思った。
それを最後に、帰って風呂に入って寝るまで何も考えずにいた。
アラームに起こされるまで、俺は泥のように眠った。
何か悲しい夢を見たような気がするけれど、覚えていない。

朝起きるとスマホには金原さんからメールが来ていて
「昨日はごめんなさい、でもやっぱり諦められないの」
と言うようなことが結構な長文で来ていて、「半田君の優しさに甘えている自分がなんたらかんたら~」と言うところまで読んであとは読まずに閉じた。
俺はそれに特に感想も持たず、はは、と乾いた笑いを発した。
結局、金原さんはどこまでいっても部長の「彼女」なんだろう。

ぐっすり眠ったつもりだったけれど、洗面所の鏡に映った俺の顔はゾンビみたいで我ながら怖い。
出して軽くなった金玉分気持ちは落ち着いているようで、それはまぁ良かったな、と思う。
心配しなくても誰にも言いませんよ、とひとりごち、こういうのも惚れた弱みと言うんだろうか、と考える。もう気持ちは全く残ってなくて、ただただ自分が情けない、と思うだけだったけれど。

情けない程あっさりした、恋の終わりだった。
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