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君はカノジョ
第6章 友情なんかじゃないやいや
「どうしたの、ご飯全然へってないじゃん」
「え、あ」
いつもの定食屋で桃子さんと向き合っている。俺の箸は焼き魚定食をつつきまわすだけで全く減っていなかった。
「なんかあった?」
と桃子さんが顔をのぞき込むけどえーいやぁ、なんか腹いっぱいで、とか適当に答える。
そんなに自分ではダメージを受けたつもりはなかったのだけど、まぁ昨日の今日だし多少はね?
いぶかしがる桃子さんの視線を受け流しながらやっと味噌汁に口を付ける。
しばらく無言で飯をかき込む。あったかいものが体に入った分気持ちがほどけて、なんかさぁ、と自然に口が動いた。
「なんかさぁ、いつもありがとう」
へっ? とこっちを見ていた桃子さんが驚いた顔になる。
「なに、急に」
「いや、いつも話聞いてもらってさ、俺、こんな情けない野郎なのにさぁ」
「…別に、いいんじゃない。半田らしくてさぁ」
「えー。俺はもっと男らしくいたいよ」
失恋して逆上して女の子ヤッちゃうとかさぁ、だめだよ。たとえそれが相手の仕組んだことでもさぁ。なんて、真昼間の定食屋では言えないけど。
「なんか…わかんないけど、半田はいい奴だよ。優しいし空気読めるしさぁ、親切に嫌みがなくていいと思うけど。見せかけの男らしさ振りかざしてるようなのより全然」
「ふむぅ…。でもそれってやっぱ優しすぎる、とかいっていい人どまりの奴の特徴だよね」
「そんなことは…」
「いいのいいの、自分でよく解ってるからさ」
「えー?待ってよ半田どうしたの」
「別に、なんか色々虚しくなってさ。俺なんでこんなんなんだろーとかさ、ずっとこのままなのかなとかさ。でもしょうがないよね。俺やっぱ男としては相当駄目な奴だと心底思…」
「そんなことないっ」
虚しさにまかせて言い募る俺の言葉を桃子さんの一喝が遮った。
それは結構な音量で、昼の定食屋のざわめきがピタッと止まる。他のサラリーマン達の注目を浴びる。
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