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そして、花開く
第7章 ~ 6 ~
降りた後に呼び止められたが、葉嶋はすっかりいつも通りに戻っており、明日の午前中に会議をする事を連絡事項として聡に伝えて、車を出した。
(………歯磨こ…)
柔らかい口唇、蠢く舌を思い出して身震いする。
キスとはこんなに気持ち悪いものだったか。
気持ち悪さに何度も服で口を拭った。
とは言え、一応上司なので角を曲がるまで見送り、車が見えなくなってから、エントランスに入る。
何だかドッと疲れてしまっていた。
エレベーターを待っていると、不意に背後に人の気配を感じる。
『……清…』
振り返ると、見知った顔が立っていた。
『ちょっと。お前何なの』
『は?何が?』
『良いから来い』
仕事帰りという感じではない、ラフな服装で、片方の手にはビニール袋がぶら下げられている。
突然来て何なのとは、それこそ一体何だというのだろうか。
ただ素の清貴が、随分腹を立てているらしい事だけは、聡にも理解出来た。