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そして、花開く
第8章 ~ 7 ~
座り直して、清香が1度咳払いをする。
『まず、誤解してるみたいだから、先に誤解を解くね。私と大樹くんは結婚しません。絶対に。それは約束出来ます』
『え?』
『だってライバルだもん。それに、清貴のバカが言った私の大事なお客さまなんだけどね。その人は私の学生時代の恩師なの。海外に孤児院を作ったらしいんだけど、そこにカウンセラーが居ないから、先生が行く時に一緒に来てくれないかって誘われてるの』
カウンセラーを目指すことにしたきっかけを与えてくれた、とても素敵な先生で母のように慕っているのだと、清香が優しい目をして語る。
ただいつ日本に戻れるか分からないのよね、と清香が呟く。
床に倒れていた弟が、涙目になりながら起き、恨みがましい視線を聡に送って、隣に座り直すと大きな溜め息をついた。
『その先生、うちの美容室のお客さんで、俺の顧客なんだ。あの日は予約が入ってて、話を聞いてたら清香の話が出て驚いた。遠慮したんだがホテルでのディナーの席でのエスコート役を頼まれて、ついて行った。清香と先生と三人で、歩いていた時に聡を見掛けたような気がしたんだ、会いたいからだろうって清香にはからかわれたけどな』
大樹が口を挟む。
なんという事だろうか。
全ては誤解だという。
恥ずかしさに顔の温度がどんどん上がって行くのを感じた。