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そして、花開く
第8章 ~ 7 ~
『悪い…』
口唇が離れ、聡の肩に大樹が頭を乗せて謝る。
眉を少し寄せ、自分自身の行動に戸惑っているような表情のまま、視線だけを聡に向ける。
自分よりも背の高い大樹から、見上げられる形になり、何だか可愛いとさえ思えた。
聡が小さく首を振る。
『嫌、じゃ、…ないですから…』
そう返事をすると、大樹の腕が聡の体に巻き付く。
力を込められて、恥ずかしくなった。
少しの間、無言のまま抱きすくめられていた聡が大樹に声を掛ける。
『ちょっと、…あの。手を洗って来ていいですか…』
『あぁ、悪い』
すぐに腕が解かれ、大樹も立ち上がり離れていく。
少し淋しさを感じたが、手が汚れているまま、大樹に触れたくなかった。
(俺も大樹さんを抱き締めたい…)
そんな風に思った。
キッチンまで移動して、手を洗う。
大樹も一緒についてきたが、何やら難しい顔のままキッチンの入り口の柱に寄りかかっていた。