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そして、花開く
第9章 ~ 8 ~
ひと月以上も連絡を待っていた清貴としては、海外へ行った清香への報告も兼ねて、からかい半分根掘り葉掘りノロケ話を聞いてやろうと思っていただけに、よく分からない展開になっていた事に驚き、こうして店から直行したのだった。
『ごめん、色々考えちゃって。あ、ビールでいいか?』
『要らない。付き合う事になったんだろ?何でお前が邪魔になるんだ?』
相変わらず直球だな、と聡が苦笑いする。
それでも、と出したミネラルウォーターに口を付けながら、清貴はようやく落ち着きを取り戻し、カウンター前のスツールに腰掛けた。
聡の横で二人の会話を聞いていた大樹が口を挟む。
『今度店の二号店を出すんだが、こないだのコンテストの結果を受けて、そこを任される事になった。忙しくなるし、あの店から離れるからな。一緒に住まないかと話したんだ』
『で、また聡のスーパーネガティブが炸裂した訳か』
『って事は、返事はノーなんだな』
二人が言葉を向けて見詰める。
一瞬たじろいだものの、聡は小さく頷きグラスを拭きあげて棚へと仕舞った。
振り向かずに手元の布巾を見つめる。
『スーパーネガティブって訳じゃないんだ。俺、あんまり家事出来ないし、ってか、生活能力はほぼゼロに近い。うちに来てくれるようになってわかったけど、きっと大樹さんは仕事から帰って来たら、家事とか食事とか世話しようとしてくれると思うんだ。優しいから、多分気にもしないでしてくれるって分かってる。分かってるけど…そんなのはフェアじゃないって思う。それに俺が繁忙期になったら、俺…迷惑しか掛けない自信がある』
『まぁ…確かに?聡の店の忙しい時は、俺が注意してないと食事すら危ういからな。そして先輩は優しいから、大好きな聡の為なら、全力で聡を甘やかすだろうな、自分が倒れてでも。…う~ん、そうか。確かにそれは重いな』
『…重い…………のか』
『いや!重いとかじゃないです!…おい、ちょっと、清貴!』
おかしな話の方向に振り向いて慌て出す聡を見て、清貴が笑う。
それを見て、大樹も小さく笑ってから、冷蔵庫を漁り始めた。