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そして、花開く
第3章 ~ 2 ~
弟同様、勝手知ったる聡の家の清香は、聡がキッチンに立ちお茶の準備をしている間、持ってきた物から小さな瓶を取り出した。
『聡ちゃん、これね清貴から預かった液体肥料なんだけど、これあげないと花咲かないって』
『え?そうなの!』
『そう。きっと聡ちゃんはガーデニングセットの中に、ガーデニングの本を入れている事にも気付いてないから、持ってってって、持たされたの』
『わ~、ごめん。けど、うん。俺気付いてないわ。多分気付いても読まないかも』
苦笑いする聡を、清香が笑う。
窓ガラス越しに見えるプランターには、少しだけ大きくなったペチュニアの葉が、見えていた。
『お花、育てるの大変じゃない?なかなか癒しって、難しいのよね。存在する人間の数だけ、その人に合った癒しがあるから。清貴が押し付けた物が、聡ちゃんの生活の一部になれば良いけど』
また要らぬストレスを抱えている、と清貴から聞いたのだろうか。
前に一度喧嘩したのを知っている分、清香の方が言葉選びに慎重だ。
昔と変わらぬ優しさに、聡はコーヒーをカップに注ぎながら、小さく笑った。