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そして、花開く
第2章 ~ 1 ~
ふ、と小さく溜め息を吐くと仕事用のカバンからバイブの音がする。
余り鳴ることの無いスマホが、今日に限って働いているらしかった。
『もしも……』
『おっそい!!何回鳴らせば気付くのよ、アンタは!!』
返事をするよりも先に怒鳴られる。
電話口では、携帯電話とは携帯しているからこその名前であって、と聡が如何に不携帯電話なのか切々と語る声がする。
相変わらずの元気の良さに、聡は小さく笑った。
『何を笑ってんのよ。早く鍵開けて頂戴』
『はいはい。もう下にいるんだね。清貴、今日仕事オフ?』
『清貴って呼ぶんじゃねぇわよ。そうよ、お店も副業もオフ。明日は夕方から本業だけよ。聡は明日休み?』
『うん。何、泊まる気満々で来た感じ?』
電話で話しながら、玄関へと移動する。
エントランスを解錠すると、後は部屋のある二階迄エレベーターに乗るだけだ。
すぐに電話と同じ声が外から聞こえてきたので、玄関のドアを開けてから電話を切った。
『いらっしゃい』
『飲むわよ、聡』
そう言って持ってきたコンビニ袋を持ち上げ微笑む男前は、三井 清貴(みつい きよたか)。
聡の幼なじみだった。