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そして、花開く
第6章 ~ 5 ~
あの当時は苦しかったが、今思い出してみれば、懐かしさに笑みが溢れる。
今寝室にしている部屋を空き部屋にし、リビングにテーブルと布団と洋服を置いて転がっていた。
風呂はシャワーのみ。
食事は気が向けばコンビニ弁当、洗濯は歩いて行ける場所にコインランドリーがあった。
仕事を覚えて、早く自立しなければと、焦っていた自分を思い出す。
半泣きで、アンタこんな生活ずっとしてたら、死ぬわよ!と寝ているのに胸ぐらを掴まれて起こされたっけ。
『それからなんですよね、料理をするための道具を、清が家に置きだしたのは。冷蔵庫とかオーブンやコンロだって、高いじゃないですか。仕事に馴れて買えるようになったら買うからって言ったんですけどね、アンタの為じゃなく、アタシがここに来た時にひもじいじゃないって、逆に無茶苦茶怒られました』
洗った皿を拭き終えて、ハタと自分の話をしてしまった事に気付く。
大樹を見やると、少しばかり眉根を寄せ、厳しい表情をしていた。