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そして、花開く
第6章 ~ 5 ~
『すみません、暗い話を』
『いや、別に謝る様な話じゃない』
そうは言うものの、大樹の表情は柔らかくない。
慌てて皿をしまい、カウンターに戻って飲み直そうとワインボトルを掴む。
大樹のグラスに注いでから、自分のグラスにも注いだ。
『お前は不器用なんだな』
椅子に座る前に唐突に言われて、聡の動きが一瞬止まった。
大樹の方を見ると、彼もこちらを見ている。
『ま、まぁ器用な方じゃないです、けど…』
『そうじゃない、人に頼るとか、人を利用する、というのが下手って意味だ』
『…迷惑…掛けたくないですし…』
『……俺は…迷惑とは思わない。お前が好きだからだ。頼られて、嬉しいと思う人間だっている』
大樹の横に立ったまま、頬が急に熱くなるのを感じる。
大樹の言葉にも、視線にも、いつもの冗談ぽさがないからだった。
(お、お、お、落ち着け、俺っ)
心臓もバクバクと暴れているが、とりあえず深呼吸をしてみる。
そう、男同士なのだから深く考えようがない話で、多分これは自分が清貴を男友達として好きだと言っているのと同じなのだ。
人に面と向かって、好きだとか言ったり言われたりする事はなかなかない為、二、三度深呼吸しないと、落ち着かなかった