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3ヵ月に1度の涙の理由
第1章 あなたにあげる、リンドウを
「なー聞いてるかあ?」

アキトは返事のない私に再度電話の向こうから声をかける。
ついつい回想モードに入り込んでしまっていたようだった。



「あ、うん。聞いてるよ。うち、来るの?」

うちからアキトの家まで、歩いて15分くらい。

私の部屋は比較的綺麗。
というか、此処2週間位は綺麗にしてある。


「あと5分で着くからあ」

またですか。アキトはいつも許可をとるのが遅い。
きっと、家に向かいながら電話かけてきた。
きっとじゃなくて、いつもそう。



一度切った電話が再び鳴ったのでマンションのエントランスへ向かう。
呼び鈴は隣の部屋まで聞こえるのでそうしてる。

目を腫らしたみっともなくてカッコ悪いアキトがそこに居た。
手にはコンビニ袋とビール6缶パックとお菓子。
それを私に手渡して、また、情けない声を出す。

「アズサー。俺死ぬかもー」

「死なないから。
 あんた、いっつもそう言って死んでないじゃん」

アキトの肩をぽんぽんしてやると、ふにゃーって笑う。



部屋に入ると早々にローテーブルの前に座るアキト。
先ほど手渡されたコンビニ袋からビール取り出して、私はアキトの隣に座る。


「振られたアキトに献杯」

「葬式かよ」

「あんま乾杯って気分じゃないでしょ」


アキトのお酒はガンガン進んだ。
ビールなんて水だ。
流した涙を補充するように飲む。
補充した水はまた目から流れる。
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