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上野んちの親父が死んだ
第1章  
 俺は上野の背中に尋ねた。
 上野は静かに首をふるふる振った。


「ううん。まだなにも片付いてないの」



 疑問は膨らんでいった。
 部屋中どんなに見渡したって、ベッド以外は段ボールひとつ残っていなかったからだ。
 


「片付いてないって・・・でもほんとにもう何も・・・・?」



 そのときふと、ルーバー扉のクローゼットが目に入った。

 ガキの頃は外でばっかり遊んでたから上野んちで遊んだ事はあまりないけれど、記憶が正しければ上野の部屋のクローゼットはその中すべてがおもちゃ箱になっていたはずだ。

 上野の親父が海外出張のたびにお土産として買ってくる、海外製の玩具を詰め込むための、おもちゃ箱に。



 俺はようやく回答を得たような気分になり、努めて明るく上野に言った。



「あー!ごめんごめん!クローゼットん中か!いいよ、やろうぜ。手伝うよ」


 心の中でジュンコごめん浮気じゃないから許してくれな、と嫉妬深い彼女に詫びて、俺はもう一度、今度は乾き始めた顔の汗をタンクトップの裾で拭った。
 そんな俺に上野は背を向けたまま、ようやく首を縦にコクリと落とした。



「ありがとう・・・カッちゃん」





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