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上野んちの親父が死んだ
第1章  
 上野は小柄な体型には余分な生地が多すぎる長めのTシャツをたくしあげ、ハーフ丈のジャージのポケットから小さいハンカチを取り出し汗を拭っていた。
 俺はそれを横目で見ながら、上野に尋ねた。


「つーか片付けるって言ってるけど、ゴミ袋とか段ボール箱とかちゃんと用意してんの?」
「ううん、とりあえず中身を出してくれたらそれでいいの。あとは私が自分ひとりでできるから」


 上野が俺のほうに恐る恐る視線を向けたのは、そのときだ。
 変わっちまってからずっと目を合わせる事がなかった上野。
 久しぶりに見る上野の目は、切れ長の瞼の下で不安げに曇っていた。


「は?ひとりで?」


 今まで上野を見て見ぬフリしてきた負い目もあったのだろうか。
 俺はスマホをうちに忘れてきた事を思い出しながらも、長年上野に対して抱き続けてきた良心の呵責を優先し、笑顔を繕った。


「・・・いやいやいや。なぁに水くさいこと言ってんだよ!俺にできることならなんでもやってやるから、気にせず言えよ」
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