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上野んちの親父が死んだ
第1章  
 上野は泣きながら首を横に振り続けた。
 そして今にも落ちそうな指を廊下の奥に向けたまま、ゆっくりとTシャツの裾をずるずるとたくし上げた。



「なんでだよ・・・だってお前、嫌なんだろ?なら・・・」



 困惑する俺を前に、上野は泣きながら胸のあたりまでTシャツをたくり上げて見せた。
 小ぶりな乳房を隠す水色のブラジャーが見えたせいで目を逸らそうとしたとき、上野は「カッちゃん」と俺を呼んだ。


「ほら・・・見て・・・」


 消え入りそうな小さい声に促され、俺は恐る恐るもう一度上野を見た。
 そしてようやく気付いた。
 小柄な上野の身体には不似合いな、へそを頂点にかたそうに前へせり出した腹がTシャツの裾から覗いていることに。



「どういうことか、わかるでしょ・・・?」



 泣きながら首を横に振り続ける上野の言葉を俺が理解出来たのは、自分の喉がさっきの上野みたいにヒッと鳴った音を聞いたあとのことだった。





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