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上野んちの親父が死んだ
第1章

「・・・ほんとに、今日は助かった」
上野は泣きながら廊下に向ける指とは反対の手で涙を拭い、ぐちゃぐちゃに汚れた顔を賢明に繕うと、俺に言った。
「そろそろ重くなってきて・・・おなかが。やっぱ一人じゃ大変だったと思う。新しい家で、おもちゃ、この子にあそんでもらうね」
あつみ、あつみ、あつみ・・・。
だみ声が玄関に響いている。
はぁい、上野が返事をしたのを、俺は呆然と見つめるしかなかった。
「よく休んで」
上野の指が力強く、廊下の奥を指し続けている。
俺は何も言えないまま、ゆっくり立ち上がった上野を横目に指先の方向へ駆け出していた。
「ありがとう、カッちゃん」
廊下の奥のドアを開け、キッチンを横切り、貯蔵庫の奥にある勝手口のドアを開ける。
背中に小さく上野の声が聞こえた。
施錠の開く音と、中年男の苛立った音と共に。
「ぜんぶ、気持ちだけ・・・もらっとくね」
上野は泣きながら廊下に向ける指とは反対の手で涙を拭い、ぐちゃぐちゃに汚れた顔を賢明に繕うと、俺に言った。
「そろそろ重くなってきて・・・おなかが。やっぱ一人じゃ大変だったと思う。新しい家で、おもちゃ、この子にあそんでもらうね」
あつみ、あつみ、あつみ・・・。
だみ声が玄関に響いている。
はぁい、上野が返事をしたのを、俺は呆然と見つめるしかなかった。
「よく休んで」
上野の指が力強く、廊下の奥を指し続けている。
俺は何も言えないまま、ゆっくり立ち上がった上野を横目に指先の方向へ駆け出していた。
「ありがとう、カッちゃん」
廊下の奥のドアを開け、キッチンを横切り、貯蔵庫の奥にある勝手口のドアを開ける。
背中に小さく上野の声が聞こえた。
施錠の開く音と、中年男の苛立った音と共に。
「ぜんぶ、気持ちだけ・・・もらっとくね」

