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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女
 
 だが、そこで則宗は思い出す。れん、という名で、これくらいの年頃の娘を持つ者の存在に。その嫌な顔が頭に浮かんだその瞬間、まさしくその存在の声が庭に響いた。

「蓮! 勝手に走り出しては駄目でしょう!」

 それは、則宗が一番嫌う息子・菊。菊は若い女を一人隣に連れ立ち、慌てて蓮と呼んだ少女の元へ駆け寄った。

「パパ、ママ! みてみて、おじーちゃんから、えだもらった! おうちかえったら、お庭にうめよう!」

「おじいちゃんって……これはお父様、こちらが大事な話をすると連絡したにも関わらず、こんなところで呑気に椿いじりですか」

 菊も蓮と同じく亡き妻の面影を残しているが、嫌味な表情からは可愛らしさなどまったく感じない。則宗が顔を歪めれば、蓮に「ママ」と呼ばれた若い女が一歩前に出て、則宗へ頭を下げた。

「初めまして。あた……わたし、姫鶴 菖蒲です。菊さんと、お付き合いさせていただいています」

「ああ、お前が菊にさらわれて孕ませられたって女か。ったく、年増かガキしか抱けねえって、病気じゃねぇのか」

 則宗は呟きながら、菖蒲をじろじろ眺める。
 
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