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甘い風
第14章 慟哭
桜子はグラスを手にとり
彼女もまた一気に喉へと流し込む

ーーゴクッーー
静寂に包まれた部屋に
響きわたる

「貴方が聞きたいことはわかる」
俯き言葉を発する

「ならば教えてくれ。何故お前は俺の前から消えた?」
ケイジは桜子の瞳と自分の瞳をあわせようとする

「怖かったの…」

「何が?」

「貴方の優しさ」

「それだけではお前は逃げなかったはずだ」

「弱さに気付いたの…貴方の弱さと私の弱さに」
呟くように俯いたまま答える桜子

「弱さ…な」
天井を見上げるケイジ

「私は愛がわからないのよ、多分今もそうかもしれない。昔とは違うかもしれないけど」
まっすぐ前に顔をあげ
うっすらと涙を浮かべる

「愛か」

「今まで貴方に会わない間、何度も貴方とのことを考えたわ。私が弱かった、愛がわからないから逃げることしか出来なかった。
貴方は優しかった。でもその優しさは弱さ。その弱さを見守る愛が私にはないのよ。
私もどうしていいかわからないの」
彼女の頬を涙が伝う

ケイジは桜子の前のグラスを引き寄せ
ボトルから溢れんばかりに注ぎ
多めに一口を含む

「わかった。これからお前はどう生きたいんだ?」

「…本当の…愛が…わかる人間になりたい」
伝い落ちる銀色の滴は止まらない

「俺が傍で見ててやる、と言ったら?」

「甘えてしまう。ただ私は貴方に甘えるだけ。それは本当の愛じゃない。またいつか貴方から逃げ出すわ」
桜子はケイジのグラスを手にとり
煽るように喉を鳴らす

「お前は昔から壊れそうなガラスだ。ダイヤに見せているが、な」
彼女の膝へ手を落とす

「わかってるわ、十分過ぎるほど。もう、38よ。それなのに…周りはみんな結婚して子どもに恵まれて。私にはそれが出来ないの」
太股に肘をつき顔を両手で覆う桜子

「そんなにさらけ出すことができるのに、何故素直にならない?」

「この状況下とお酒のせいよ…」

「酔いがまわるほど飲んではいないだろ?」

「ちょっと煙草吸いたい。どこで吸っていい?」

「ここでいい」
灰皿をサイドテーブルから差し出すケイジ

「ありがとう」
顔を上げ鞄からタバコを取りだし
彼には見えないように髪で遮った涙を指先で拭い
上を向いてタバコに火をつける




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