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甘い風
第14章 慟哭
桜子の両脇を正面から抱え

「すまなかった」
その一言だけを口にして
桜子を抱き上げ
玄関へと連れ出し
彼女は力なくヒールを履く

待機していた黒塗りは
後部ドアをあけ
ケイジは彼女の両脇を持ち
座席へ座らせる

「彼女を送ってくれ」

「かしこまりました」
ケイジがドアを閉める

桜子は住所を告げ膝を抱えて泣き崩れる

ゆっくりと夜の街を走り出すが彼女は外を見る余裕もなく
声をあげて銀色の雨を降らせる

そして顔をあげ
前を見詰め
目の下の滴を静かに拭う

(今甘えたらきっとまた同じ事を繰り返してしまうから。ケイジ、好きだった。愛がそこにあったかはわからないけど…)

窓の外へ視線を流し

(もう、梅雨入りの季節ね…)



「ありがとうございます、こちらで止めてください」

「かしこまりました」
運転席のドアが開き
後に後部ドアが開く

細い脚が地面におりたち
「ありがとうございました。真田さんにもありがとうございました、と、お伝えください」

「かしこまりました」

彼女は背筋を伸ばし建物の中へ消えていく





「ただいま」
ヒールを脱いでいると

「遅かったね!どうしたの?」
満面の笑みで彼女を迎える翔

「うん、ごめんね、ちょっと取引先の人に急に誘われちゃって」
顔をあげない桜子

「うん、確かに酒臭い」
彼女の腰へ腕をまわし
クローゼットへ

「シャワー浴びてくるわ」
ジャケットをハンガーにかけ
バスルームへ消えていく桜子

その姿を追いかけ
「一緒に入ろ」

シャワーを交互に浴び
翔は湯槽へ
桜子はメイクを落とし
ケイジの気配を全身から洗い流す

「どこの会社だったの?」
無邪気に聞く翔

シャワーの音で聞こえないかのように答えない桜子

シャワーをとめ髪をクリップで留め
「翔は洗わないの?」
身体を腕で隠しながらバスタブへ

「さっきシャワー入ったから」
彼女の背中を受け止めるように腕を伸ばす

「お前、泣いただろ?」
桜子の肩へ手でお湯をすくい
かけながら翔が呟く

「泣いてないよ」
膝を抱えている桜子

彼女の顔は見えないが言葉を紡ぐ翔
「ずっと顔を合わせないし」
ピシャンピシャンと彼女の肩へお湯をかけ続ける

「そんなことないよ」
彼女は翔へ顔を向ける

「嘘が下手過ぎ。目が真っ赤だから」
桜子の頬へそっと唇をあてる









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