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甘い風
第6章 精算
ぐさりと突き刺すような一言を投げつける男を振り返ることなく
人混みの中
しっかりと彼の手を強く握りしめ
カツカツと歩く桜子

「何かあった?」
切り出す翔

「何もないよ」
淡々と答える桜子
(あの犬男、二度と会いたくないなぁ)

「ふぅん、なんか随分失礼な奴だったね。全部聞きたい気持ちと聞かない方が幸せかなーって思う気持ち」

「何もない、気にしないで」
(あんな男と寝てた自分が悪いしなぁ)

「元彼?」

「全く違うよ」

「ルックスはいいけど、なんか残念な感じの男だね」

「そうだね」
(だから、好きにもなれなかったのよ。翔は何か感じただろうなぁ)

「ねぇ、買い物ついでに桜子のヘルメット買いに行こ。そうすれば一緒にバイクでどこでも行けるよ」

「うん!嬉しい!」

「買ってあげるとは言ってないよ」
意地悪い顔で笑いながら

「そうだね、学生くんは貧乏だもんね。ちゃんと自分の物は自分で買うわ」

「偉いねぇ、桜子ちゃんは」

「ありがと。だって大人だもーん」

「嫉妬した」
突然表情が素になる翔

桜子はうつむき
「何で嫉妬?なんかイヤな想いさせてごめんね」

「俺の知らない桜子を知ってる感じがした」

「それはないよ」

「キスしていい?」

「いいよ、もちろん」

人びとが賑わう街中で
彼女を抱きしめキスをした
振り返る人の視線など気にせず

「そういえば私、まだ翔のバイクに乗ってる姿みたことない。」

「今度どこか行きたいところある?」

「海に行きたい」

「じゃ、今度の休みの日に晴れたら海にバイクで行こう」


手を繋ぎ
黒いへルメットを買い帰宅

アルゼンチンタンゴをBGMに
ダイニングソファでくつろぎながら
「夜ご飯、ハンバーグでいい?」

「うん、でも先にコレ着て」
買ってきた袋の中をガサガサとあけながら

「お洗濯してからじゃなきゃイヤ」

「そっかぁ、残念」

「じゃ、コレ使ってみようよ」
無邪気な笑顔を向ける翔

「たくさんあるね、メロン味がいいなぁ」
コンドームの箱、説明文を読みながら両手にしている桜子

「俺、メロンになるのかぁ」

「イチゴもあるよ」

「どっちでもいいよ」
クスクス笑い

「やだ、翔が頭からメロンかぶってるの想像しちゃった、着ぐるみみたいに。かわいい」

「俺、そんなキャラじゃないし」

「かわいい、メロンくん」
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