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本能のまま愛す
第2章 秘密の花園
「ひでちゃんは変わってて分からなかったわ。本当に久しぶりね。」

「帰りは電車?歩き?次も仕事あるんだろ、車で送るよ。少し話したいし。」

「え!今日は佐藤さんが最後だから、ちょっと買い物したいし駅まで行くけど近いから歩くわ。ありがとう、ひでちゃん。」

「じゃあ駅まで送るよ歩いて。」

「相変わらず優しいわね。」

「あはは。普通でしょ。行こう」

二人は家が近く幼なじみで幼少期によく遊んだ仲だった。10才くらいまでだろうか。
秀樹はいつも優しく幼い妹をよく面倒みていた。百合子に対してもいつも優しかったが少しずつ疎遠になっていった。そのことは百合子の心の奥に罪のような意識として刻まれていた。
秀樹の家はボロボロで汚かったため、子供たちから秀樹と妹はからかわれていた。服装は冬でも半袖短パン、成績もクラスでダントツの最下位。いつも除け者扱いする子供たちを秀樹の母は怒鳴りつけた。怖い母ちゃんと更に秀樹はからかわれていたが、本人はそれほど気にする事もなく休まず学校に来ていた。
そんな秀樹と一緒にいるのを見られるのが嫌で百合子は遊ばなくなったのだ。

秀樹が悪いことは一つもなかった。家に遊びに行ったときは秀樹の母も百合子に優しかった。
なのに秀樹に冷たくした自分を時間の経過と共に深く反省した。

疎遠になってからの秀樹の記憶は百合子にはなかった。学校は卒業するまで一緒だったはずだがクラスが違ったため話すことも会うこともなかった。

「5年前にお袋が死んで、親父すっかりまいっちゃってね。心配してた時に脳梗塞で倒れてさ。ヘルパーさんには本当に助けてもらってるよ。ありがとな。」

「そんな…私たちはお仕事だもの。ひでちゃん大変だったわね。妹さんは?」

「旦那の転勤で海外なんだよ。お袋の命日くらいしか帰ってこないなぁ。」

「そう…。私はヘルパーとしては月に1度だけど、何か困った時は呼んで!友達として何でもお手伝いするわ。」

「あはは。そんな意味で話した訳じゃないからさ。親父も寝たきりって訳じゃないし大丈夫だよ。でも百合ちゃんの連絡先は知りたいかな…友達として。」

「ええ、もちろんよ。」

百合子は自分の携帯番号とメールアドレスを書いて秀樹に渡した。
秀樹はその場で百合子に電話をかけた。
「ありがとう。俺の番号も登録しといて。」

「うん。」

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