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君へ贈る愛の唄
第3章 金縛りの夜
拓也side
北山動植物園へやって来た。
入り口近くでは、幼稚園の団体がにぎやかに記念撮影をしていた。
「ふふっ、拓也もあんなだったな〜」
「ああ、そう」
母さんは嬉しそうにはしゃいでいる。
連れて来て良かったが、なんで動物園なんだろう?
さっそくオレ達は、
フラミンゴの池から順番に見て回った。
「あっ拓也、象さんだよー!」
「わかったから、おっきい声出すな」
見ると人ごみの隙間から、動き回る象の姿が。
そういえば一体何年ぶりだろう。
子供の頃は、父さんと母さんとよく来てたっけ。
キリン、ライオン、シマウマと続いて…
「コアラ〜!」
「はいはい」
母さんが無邪気に叫ぶ。
女はほんとコアラが好きらしい。
コアラ舎の中は、薄暗かった。ガラス張りの展示室の中に、ユーカリの木が生い茂っていて、所々にコアラがつかまっていた。じぃっと動かずにいるその姿は、まるでぬいぐるみのようだ。
「かーわいい♪」
まあ確かにかわいいな。
ォレは楽しそうに見入っている母さんを見て、少し反省した。
いつも家の中だけで過ごさせて、たまには自由にしてやらないとかわいそうだな、と…。