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君へ贈る愛の唄
第5章 熱
救急外来。
「一条彩音さん、中へどうぞ」
名前を呼ばれると、オレは母さんを抱きかかえて診察室へ入った。
そこには、まだ若そうな男の医師が座っていた。
すると看護師に言われる。
「お連れの方は、待合室でお待ち下さいね」
「え、はい…」
バタン。
仕方なくオレが行こうとしかけた時。
ドアの向こうから医師達の声が聞こえてきた。
「じゃあ、ちょっと胸の音を聞かせてもらおうかな?」
「服まくりますよ〜」
なにっ、あの医師に胸を見せてるのか…。
ふっ。ばかだなオレは。
ここは病院なんだから、体を見せるのは当たり前じゃないか。
ーーーー
母さんが出てきた。
「今インフルエンザの検査もしましたから、結果が出るまでもう少しお待ち下さい」
「はい」
オレは頭を下げ、二人でベンチに座って待つ。
母さんはオレの肩に頭を預けると、目を閉じた。
「検査、どうだったの?」
「…ちょっと痛かった」
「そっか…。よしよし」
オレは母さんの頭をそっと撫でた。
ほのかな甘い香りが、オレの鼻をくすぐった。