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透明な鎖
第2章 秘事
重い足取りで自分のマンションに帰り、エレベーターを上っていく。
静寂に包まれた通路で響くのは、あたしのヒールの音だけ。
もうすぐ自分の部屋の前に辿り着くところまで来た時、あたしの目が、人の影を捉えた。
薄暗くて誰かはわからない。
顔も見えない。
でもあれは……確実にあたしの部屋の前だ。
恐る恐る近づいてみると、ヒールの音に気付いたのか、その人が顔を上げた。
「あっ……」
「お前、何処行ってたんだよ」
……な、渚先輩……。
「と、友達と遊んでたんです……。てか、なんでいるんですか?」
瞬時に、嘘が口から飛び出す。
本当のことなんて、言えるはずがない。
「は?俺、今日の夜来るって言っただろ」
明らかに不機嫌そうな口調。
……そういえばそうだった。
本気だと思わなくて、蓮と会うのを優先してしまったんだ……。