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第15章 その15

お客様はもちろん色んな人がいる。

TEL予約の時点で無理を通す人、
『髪質的に難しいよ』と言っているのに終わってから「似合わない、ヒドイ」と言う人。
拘りがあり、
前髪の2ミリのズレも許さない人。
全て担当美容師にお任せの人。
赤ちゃんを連れてきて『私が切ってる間、見ててください』という人……。


様々な人が来るなか、
左山さんは異性としてではなく〔かなり大人しくて無表情〕
という、
異質な意味合いで気になっていた。自分と年齢もそう変わらないだろうに、あまり見たことがないタイプだ。〔観葉植物〕のような佇まいをしている。

今日も無言で週刊誌を捲っている。

ボクは背後から見下ろし、ハサミを細やかに動かす。

美容師はお客様の髪だけではなく、
視線も見ている。


うちの『koo.』は、
カットの上手さも売りだけど…
スタンスとしては「お客様に合わせた接客をする」店だ。


お喋り好きなかたにはお喋りしながら。
雑誌を読みたいかたには無言。
無理強いや美容師本位な話はしない。


（左山さんのような人には、こういうスタンスが落ち着くのかな？）

そう思って、
髪を切りながらふと左山さんを見遣ると…