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お願い、俺を選んで。
第2章 予感
そして、今日。入学式当日。
俺は桜並木の途中の古びたベンチに項垂れて座っている。
シワ一つない紺地に白いストライプのスーツに、濃紺のネクタイ、ツヤのある真っ黒な革靴。今日の入学式のためだけに母さんが買ってくれた新品だ。
残念ながら望んでいた舞台に立つことは叶わなかったこのスーツたちが、どうしようもなく哀れで、惨めで、かわいそうに思えた。
結局、何年経っても学校への苦手意識は克服できないまま、この場所で惨めに項垂れている。
哀れで惨めなのは、俺だな...
顔を上げて背もたれに寄りかかり、上を向いたまま目を閉じた。
真っ青な青空が、薄い瞼の皮膚から透けて見えるような気がした。
キャンパスから微かに聞こえてくる式の挨拶を、ときどき吹く春風が消してくれているようで、妙に落ち着いた。
このまま、何も考えずに生きていけたら幸せなんだろうな...
しばらくそのまま目を閉じていた。
カッカッカッ...
遠くで、微かに聞き慣れない音が鳴った気がした。

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