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初めて知る痴愛の味
第6章 そして彼と人間関係のある者が
その日からも授業はずっと何事もなく行われている
話を聞いている側からすれば自分の様子に違和感など覚えないだろうが心の中では早く終わってくれと退屈し、いい加減に済ませて休みたいと思っていたのだった


夏休みが明けても暑さは残っており、やる気はそがれてしまう
勿論長期の休みから来る気怠さもそこの乗っかってきてこう思うのだろう


でも自分の場合は全くと言っていいほど違ったこの気怠さもやる気の無さも暑さなどからくるものではなかった

学校が開始して一日目に中島先生の葬式に出席するという暗いスタートだった
夜、葬式には私と教頭先生の二人が代表して出席した
中島先生のご主人と見られる方とその隣にお子さんと見られる中学生位の男の子が暗い雰囲気で顔を俯かせ正座をしているそしてその太腿の上に乗った両手は握りこぶしをしている

泣くことを我慢しているのかそれとも泣くことができないほど中島先生の死を悲しんでいるか自分にはそんな風に見受けられた


葬式が終わった後帰りは一人であったのだが夏の夜なのに虫の声はせずやけに静かだったのかもしれない


帰宅してから家用の服に着替え床に座る
電気を付けてはいたがテレビの画面は暗いままで少しの間ぼーっと見つめていた
とにかく静かで自分の呼吸をする音だけが聞こえる中何も考えることなく
体は身動き一つしない


考えてはいなくとも明日からまた普段通りの自分に戻るため心の整理をしなければいけない

今日は初めて夕食にコンビニ弁当を選んだ
口に物を運ぶ度噛む度に何か寂しい思いが湧いてくる
もう職員室で笑いながら話し合うことができないという実感を
現実のものとして捉えはじめるがそれをきっかけとして悲しい感情が押し留めていた壁の亀裂から漏れ出して来る
あの男の子の様に涙が出ないことで自分もより苦しい思いをしたのだった



こんなことがあってからも一日で終わらせるつもりだったのだが上手く切り替えられないというか納得のいく授業ができないでいた
悲しみが消えたわけではないがもう中島先生はいないという事実は受け止めている実感がある



なのに何故だろう・・・?


まだ心の奥底が自身でも理解できていないことに対して不安を覚えながらも仕事をしなければいけない日々が9月終わりまで続いたのだった
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