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初めて知る痴愛の味
第13章 枯れる花と咲く花
「・・・で、そこから見える景色がすごく良かったんですよ!」

柏尾菜々が最近の中でも一番綺麗な笑顔で話してくれた
どうやら両親と一緒に旅行へ行って来たらしい
久しぶりのことだったのだろうか、体中から溢れるワクワクが彼女の所作をコントロールしているみたいだ
少し意外であった
柏尾菜々が意外と子供っぽい仕草をするんだという発見も勿論であったのだが、家族で旅行をそれほどしないのだろうかと、あんなに仲が良く見えたのだが

きっと忙しいのだろう
そんなことを思いながら彼女の旅行話をホームルームが始まる前まで聞いていた
こんな出来事が今日一日を以前の様に先生という意識を持ったまま生活する為の糧になってしまうとは思わなかった



水品昭雄はここで再び人とつながるということを無意識的に重要であると感じた
繋がりが断ち切れてしまった過去の女性達のことはもう彼の頭の中には残っていなかったが、常に孤独の中に包まれているのが現状であった
孤独であると思い続けながら生活をしていくと寂しいと思うことに慣れてしまう
せっかく、慣れることができたのにも関わらず、再び人と接することで水品昭雄は寂しさの中にいるんだということを確認しなければならなかった
確認をしている彼はこのイタチごっこがひどく嫌でたまらなかった
40代、独身、教え子をたくさん抱えている先生
こんな立て看板が理性の中に、しっかりと目につくように掲げられていた

学校の帰りに彼はサイトをきっかけとして出会った女性と連絡を取る為、携帯を手に取った




脱ぎ捨てられたタイツがベッドの上で何度も揺らぎ、気が付けば花の模様が付いた天井を見上げながらシャワーの音を聞いているのだった
なぜなのだろう
異性と繋がろうという意志は不自然にこの立て看板をすり抜けていく



こんなことを何度も行っていて、決して渇きが潤うことはないんだと自覚してもいいはずであるのに彼の色狂いは留まることを知らなかった
恐らく自覚しているのだろう
自覚しているにも関わらず彼は異性と一夜限りの関係を続けていた



自分のまわりには教え子と仕事仲間と旧友、そして柏尾菜々しかいなかった
これでは異性と意識できる人間がいない



彼はこうやって自分の行為を正当化させているのだった
とても苦しい、終わりが見えないこの現実が彼の眼のなかで炎が黒い煙を上げて燃えている様に見えた
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