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初めて知る痴愛の味
第13章 枯れる花と咲く花
柏尾菜々の旅行話を聞いてから数日経った日の夜のこと

この日はいつもと違って居酒屋で一人、飲んでいた
5,6年前だと毎週金曜日はここで店が閉まる直前まで何も考えることなく女将さんの姿を肴にしていたのだった
こんなことに楽しさなんて無かったが酒を飲むことが仕事を長く続けていくための通過儀礼みたいなものだった
一度体を壊してから行かなくなったこの場所で自分は高校生の頃のことを思い出していた
特に高校生の頃なんて、常に正義を信じていて、こんな汚い大人達になんてなってやるものかという意志が堅くて・・・、こんなこと、今になって思えば、少しだけ恥ずかしさがありながら、昔を愛おしく想い耽る
右手には白く透き通った猪口を持ちながら左手は机の上に置き、木にしては明るく感じるような椅子に座る
頭から倒れ込んで傍から見れば酔いつぶれて寝ている様に見える姿勢ではあるだろうが、照明の反射光と共に自分の左腕を見つめたまま、少しだけ笑みをこぼす
冷たい感覚が頬から伝わり他の客が椅子から立ち上がる音が聞こえてくれば、一方では真面目な人生の話、また一方では、酒の飲み過ぎで声が大きくなったまま、同僚とふざけている会社員の声などさまざまであった
上半身だけ寝そべったまま未だに声を出すことも無く自分のまわりだけ時が止まったように静かであった
実際はとてもうるさかったのだろう
しかしながら意識を反射した光に向けているとこのいろんな雑音も遠く彼方にいってしまって、どこか適当なところでプツンと音が途切れて空気が沈黙したような錯覚に陥った

私はふと自分が生まれ育った田舎のことを考えるようになっていた
田んぼ、風が吹いて揺れているにも関わらず稲の穂に頑として止まっているシオカラトンボ
透き通った羽は綺麗に畳まれていて胴体は沈み、尾が斜め上を向いている
決して何を考えているのかわからない表情をしていると思えば突然前足を顔の前に持って来て顔の半分ほどあるだろう口が開く
きっと足についていたゴミを落としているのだろう
こいつも夏の終わりにはどこか土の上で一人寂しく死んでしまうのだろう
そう思えば今度は飛びながらこの田んぼに張られた水に何度も尾だけを沈ませているのがいた
もう卵を産んで次の世代の為の準備をしている
輝いて見えるであろうこの景色はなんだか見ていて悲しくなってくる
私は急に自分の存在の象徴を探したくなっていた
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