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ドアの隙間
第12章 エピローグ
「ずっと感じてた事を言ってもいいですか? 私、旦那様は先のことをすべて見通して、お膳立てしていたんじゃないかと思うんです。そう思いませんか?」

「由貴ちゃん」

「奈津美さんの幸せを一番に考えていたのは旦那様なんですよ、だから大事な事を石崎さんだけには……」

「この話はここまでよ」

「もぉ~」

「ママー、さっき買った望のアイスちょうだい」

「まだよ。由貴お姉ちゃんのお家で手を洗ってからね、あ、階段気をつけて」

「由貴お姉ちゃん、早くカギ、カギ」

「あはは、はいはい」


あなた……
私、ちゃんと母親やっています。
望はお茶目で楽しい娘です。あなたによく似ています。
親としての私の奮闘を見てましたか?
お義母さんに叱られましたか?
仲良くやっていますか?

私は、私は……



____________




運動会の帰り道、疲れを知らない望はゴムまりのように私達の回りをびょんぴょんと跳ねた。

「ママかけっこ見てた? 望何番だった?」

「んー、2番かな3番かな」

望は友達とはしゃいでばかりで、かけっこの順位など頭に入っていなかった。

「え~、2番がいいな」

「望ちゃんは2番だよ。ちゃんと見てたから間違いない。ほらこれ」

石崎が、望から預かっていた銀色の紙のメダルを見せた。

「やったー、それ首飾りにする」

立ち止まり、メダルを掛けてもらった望は「ありがとう」といってメダルを見つめた。

「いつも望のわがままに付き合わせてしまって申し訳ありません」

「いいえ、私は結構楽しんでいますよ。今日は手作りのお弁当ごちそうさまでした、美味しかったです」

「いいえそんな。あ、望、そんなに走ったら危ないわ、ほら、手を繋いで」

「はーい」

望は駆け戻り、私達の間に入って二人と手を繋いだ。

「わ~い、ブランコみたい」

ぶら下がる望の身体を、腕を上げて持ち上げた。

「あはは……」

「望ちゃん軽いなー、そーれ」

望がぐーんと前に足を伸ばした。

「わ~い」

「望ちゃ~ん」

「あ、ともちゃんだ」

仲良しのともちゃんが振り向いて手を振った。

「望ちゃんのパパなの?」

「そうだよー」

「望っ!」

私は望を地面に下ろした。

「望、嘘はだめよ」

「パパは石崎さんがいい」

「望!」

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