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ドアの隙間
第5章 女の影
あれから早く帰宅するようになった夫が、夕食を終えると、ダイエットだと言って散歩に出るようになった。

「気を付けてね」

「うん、今日はたくさん歩いてくる」

私達は夫婦でありながら、腹の探り合いをしていた。義父との事がなければ、私は迷わず夫を問い詰めていただろう。

彼は散歩から戻ると、汗を流して早めに寝室に入ってしまい、私がベッドに入る頃には背中を向けて眠っていた。だが最近、十二時半になると必ずメールの着信音が鳴る。それは毎晩繰り返され、まるで夫が寝入っているのを確かめているようにも思えた。私への嫌がらせなのか、挑発なのか。夫は話をつけたのではないのか。
目を閉じると、赤い下着で夫を誘う女が見える。

義父は、普段通りの態度を崩さず、私が熱く見つめても、目を合わせてはくれなかった。 何もなかったかのようだった。
私を放っておく義父が憎かった。

みんながそれぞれに嘘を隠していて、一番卑怯なのは私だった。
どうしようもなく寂しい。



12月も中旬を過ぎた頃、寝室から話し声がしてドアの前で立ち止まった。

「大丈夫だよ。……あぁ、決まってるじゃないか、本当だよ……」

ドアを開けた。

「……では、そういう事で、はい、はい承知しました、失礼します」

「誰から?」

「あぁ、部長から」

「あら、女の子からだと思ったわ」

「バカだな。そんなわけないだろう」

「あなたの好みは年上だものね」

「……奈津美、おいで」

久々に夫が私を誘った。面倒な妻を黙らせる為に。強く拒否すべきところで、なぜかそうできない。
身体が求めるのは夫だろうか。
夫が求めている身体は私だろうか。
私は夫を見つめ、着ているものをゆっくりと脱いだ。

義父に言い放った言葉が嘘に変わっていく。拒まないのは、不審に思われない為と、私を放っておく義父への当て付けなのかも知れない。

「私達、大丈夫かしら?」

「え、何が? あぁ、奈津美、綺麗だ……」

ベッドの横に立つ私に近づき、乳房を揉み、乳首を口に含んだ。

「ぁん」

「あぁ……久しぶりの奈津美の身体……」

そう、私の身体は久しぶり……
私もよ、あなたの身体は久しぶり。

「疲れてない?」

「もうこんなになってるよ」

私の手を取り、起立したペニスを掴ませる。夫を懐かしく感じた。

「ほんとだ、凄く元気」

「おいで」

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