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ドアの隙間
第6章 長い夜。
「お義父さん、お風呂先にどうぞ。私、悟史さんに電話してみます」

「あぁ、そうしよう。ごちそうさま、美味しかったよ」

「ありがとうございます」

「……奈津美さん」

「はい」

「そばにいた方がいいかい?」

「……いいえ」

「……わかった」

今、義父のそばにいてはいけない。夫が帰ってきたら、お疲れ様を言って、笑ってハグをしよう。そして始めからやり直す。乾杯して、プレゼントをもらって、上機嫌で食事をする。
私は食器を洗ってテーブルを整え、駅まで帰ってきているかも知れない夫の携帯に電話をかけた。

呼び出し音を数えながら夫が出るのを待つ。15回を数えた所で留守番電話に切り替わった。電話を切り、またかけ直す。

……11、12、13……

「…………はい」

女の声がした。

「あの、今、悟史さんは出られないんですが」

「あなたは?」

「……関口ミカです」

心臓がずしんとその存在を主張し、次第に暴れだした。
二人とも会社で残業していて、夫は席を外しているのだろうか。

「あの、奥さまですよね」

「夫に代わってください」

聞きたいのはあなたの声じゃない。

「……悟史さんは、今お風呂に入ってます」

なぜ妻に向かってそんなことが謂えるのだろう。なんてバカな子。

「そうですか、では、お風呂から上がったら、連絡させてください」

私は余裕の妻を演じた。早く切りたかった。

「あの……、もしもし?……聞こえますか?」

「何ですか?」

「私……妊娠したんです」

「……えっ?」

「私達、愛し合ってるんです。私、悟史さんの赤ちゃん、産むつもりです。これから悟史さんにも話します」

……赤ちゃん?なに、赤ちゃん?
何を言ってるの?
この子は何を言っているの?

「もしもし? 聞こえますか? もしもし、もしもし……」

足元が音を立てて崩れていく。
どうしたらいいのかわからない。
怒ったらいいの? 笑ったらいいの?
悟史に子ども?
子どもはいらないって言ったじゃない
二人で話し合ったじゃない

悟史……
愛し合ってるって本当?
なに、なんなの? なんなの?

「ケーキはもういらないって、悟史に伝えて…」

私は震えて電話を切った。甘ったるい女の声が笑える嘘をくり出して、私に勝ったつもりでいる。

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