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ドアの隙間
第6章 長い夜。
クッションを膝に抱え、ぺたんと床にへたり込んだ。
今のはなに?
妊娠? 赤ちゃんを、産む?
悟史、子供はいらないって言ったよね。あの子嘘をついてるんだよね。
産みますって言ったのよ、産みますって……

そんなに簡単に言わないでよ。いらないんだから。みんなで話し合って納得を得たんだから。悟史はいらないって言ったのよ。お義父さんもお義母さんも反対しなかった。だから私は引け目を感じる事なく今日まで……
表向きは納得したとしても本心はどうだったのか。
「お義父さんお義母さん、じつは赤ちゃんができました」
もしもそう報告したなら、きっと心から喜んでくれただろう。電車内で、他人の抱く赤ん坊をあやすぐらいだもの、喜ばない筈がない。

「悟史と連絡とれた?」

「………」

「奈津美さん?」

「えっ?」

「どうした、顔色が悪いよ」

「あ、いえ、ちょっと眠くなってしまって」

「……疲れた顔だ、少し横になるといい」

「私、ちょっとコンビニに行って明日の食パンを買ってきます」

「これから?」

「……えぇ、お義父さんは先に休んでください、悟史さんは、まだ残業終わらないらしいんです」

「一緒に行こうか?」

「いえ、せっかくお風呂に入ったのに冷えたら大変。すぐ帰ってきますから」

「気をつけるんだよ」

「はい」

バッグを持ち、ダウンのコートを着て、外に出た。 ここで夫を待つぐらいなら、外へ出た方がましだ。ふと振り向くと、我が家がよそよそしく私を見下ろしている。我が家……

悟史がお父さん……

「はっ、嘘でしょう? あははは……」

子供に罪はない。
私は子どもの頃、友達の誕生パーティーに招かれたことがある。楽しく飾り付けされた部屋のテーブルに丸いケーキ、サンドウィッチに唐揚げ……。ろうそくを吹き消したあと、友達の母親が笑顔でケーキを切り分けてくれる。優しい家族。私は、この家の子供になりたいと本気で思ったものだ。

悟史が父親になるなら、私があの家にいる意味がない。邪魔者でしかない。
怒りでも、悲しみでもない、諦めのような感情が私を包んでいた。子供には温かい家庭が必要だ。

いつの間にか駅近くまで来ていた私は、飲食店の入った雑居ビルの前で立ち止まった。義父と来たバーがあるビルだ。

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