この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ドアの隙間
第6章 長い夜。
玄関の鍵を開けた義父に「冷えただろうから、すぐ風呂に入りなさい」と言われ、私はおぶわれたままリビングに入った。
「お義父さんこれ……」
クッションがすべて床に落ち、定位置にあるはずの雑誌やリモコンまでが散乱している。
「しまった。奈津美さんの携帯をあちこち探して急いで家を出たから……」
その様子が目に浮かび、思わずぎゅっと義父にしがみついた。
「ほら、温まっておいで。片付けておくから」
義父は脱衣所に私を下ろし、優しく背中を擦ってからドアを閉じた。
バスタブに浸かってほっとしたとたん、あの男の気味の悪い息づかいや、乳房に触った手や舌の感覚が蘇ってきた。自分の身体が穢らわしい。私は慌ててバスタブから出るとボディーソープをタオルにつけ、身体中をごしごしと擦った。肌に残った記憶が憎い。忘れてしまいたい。
せめて最後に義父に抱かれ、その記憶だけをこの身体に残して去っていきたい。
脱衣所に洗い立てのバスローブが置いてあった。義父が自分の物を持ってきてくれたのだろう。私はそれを着てそっと二階に上がり、寝室でパジャマに着替えた。キッチンに降りていくと、コーヒーの香りがする。
「温まったかい?」
「はい、バスローブ、ありがとうございました」
「いいさ、ケーキ食べようか」
「いただきます」
私達はショートケーキを頬張りながら、また、コーンの話をして笑い、フタを缶詰めのように全部外れるようにするべきだ、でも口を切る恐れがある。更に、コーン無しの缶スープは絶対ダメだなどと他愛のない話で 盛り上がった。
キッチンで一緒に食器を洗い、歯を磨いた。
「おやすみ」
部屋に入る義父を追って部屋に入り、私は後ろから義父を抱きしめた。
「……どうした」
「お義父さん」
義父は私と向き合い、探るよう目つめてきた。
「……ここにキスマークがついてる」
義父が鎖骨の辺りを指で押さえた。
「え?」
「出ていく時にはなかったよ」
「お義父さんこれ……」
クッションがすべて床に落ち、定位置にあるはずの雑誌やリモコンまでが散乱している。
「しまった。奈津美さんの携帯をあちこち探して急いで家を出たから……」
その様子が目に浮かび、思わずぎゅっと義父にしがみついた。
「ほら、温まっておいで。片付けておくから」
義父は脱衣所に私を下ろし、優しく背中を擦ってからドアを閉じた。
バスタブに浸かってほっとしたとたん、あの男の気味の悪い息づかいや、乳房に触った手や舌の感覚が蘇ってきた。自分の身体が穢らわしい。私は慌ててバスタブから出るとボディーソープをタオルにつけ、身体中をごしごしと擦った。肌に残った記憶が憎い。忘れてしまいたい。
せめて最後に義父に抱かれ、その記憶だけをこの身体に残して去っていきたい。
脱衣所に洗い立てのバスローブが置いてあった。義父が自分の物を持ってきてくれたのだろう。私はそれを着てそっと二階に上がり、寝室でパジャマに着替えた。キッチンに降りていくと、コーヒーの香りがする。
「温まったかい?」
「はい、バスローブ、ありがとうございました」
「いいさ、ケーキ食べようか」
「いただきます」
私達はショートケーキを頬張りながら、また、コーンの話をして笑い、フタを缶詰めのように全部外れるようにするべきだ、でも口を切る恐れがある。更に、コーン無しの缶スープは絶対ダメだなどと他愛のない話で 盛り上がった。
キッチンで一緒に食器を洗い、歯を磨いた。
「おやすみ」
部屋に入る義父を追って部屋に入り、私は後ろから義父を抱きしめた。
「……どうした」
「お義父さん」
義父は私と向き合い、探るよう目つめてきた。
「……ここにキスマークがついてる」
義父が鎖骨の辺りを指で押さえた。
「え?」
「出ていく時にはなかったよ」