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ドアの隙間
第7章 見えてきたもの
「関口ミカと申します」
「あの、一緒に来てもらったんだ」
「奈津美さん、上がってもらいなさい」
義父の声で我に返った。
「あ、どうぞ中に」
間の抜けた顔で突っ立っている私の前を悟史が通り過ぎ、そして、甘えた声と同様、幼顔のミカが会釈をして通り過ぎた。
二人をリビングに通した義父が戻って来た。
「奈津美さん、お茶でも出してあげなさい」
「あ、はい」
義父が背中を押してくれ、私はキッチンへと進んだ。
「心配ない、ただの仕事仲間だよ」
私の様子を察した義父はそう言って、戸棚から湯飲みを出してくれた。
「大丈夫です、お義父さん、座っててください」
「そう、わかった」
小刻みに手が震えて急須が揺れ、お茶が上手く注げない。これから何が起こるのかわかっていながら、私は焦り、緊張していた。
並んで座っている二人を前に、私は息を整えてお茶を出した。長い沈黙に痺れを切らし、口火を切ったのは義父だった。
「悟史、話があるのか」
「あ、うん、実は……」
悟史がお茶を一口飲んだ。
「今俺、彼女と、関口ミカさんと付き合ってて……」
「ん? 付き合ってるってなんだ」
「だからその……」
「お前は妻帯者なんだぞ、浮気してるんだろう。なぜ、その相手をわざわざ家に連れてくる必要があるんだ」
「その、実は……」
終わる、終わりだ……
私は目を瞑った。
「子どもができたんだ」
「なんだって? お、お前、何を言ってるんだ!」
義父が身を乗り出して怒鳴った。
「だからその、子供が……」
私はまるで他人事の様に、目の前の出来事を眺めていた。
「お前、子供は要らなかったよな…」
「………」
「いったいなんで浮気なんか」
今となってはどうでもいい事を義父は問いただそうとしていた。
「お袋が亡くなってから、……奈津美は俺よりも、親父の事ばかり気にかけていて……まぁ、当たり前なんだけど」
「奈津美さんのせいなのか?」
「いや、俺が悪い」
「あの、悟史さんは寂しかったんだと思います」
ミカが言った。
寂しい? 悟史、本当の寂しさを知っているの?
「会社でもなんだか落ち込んでいるみたいだったので、可哀想になって、何度か食事に誘ったりしました。少しでも癒してあげたくて、私、いつも悟史さんの側にいました……」
「あの、一緒に来てもらったんだ」
「奈津美さん、上がってもらいなさい」
義父の声で我に返った。
「あ、どうぞ中に」
間の抜けた顔で突っ立っている私の前を悟史が通り過ぎ、そして、甘えた声と同様、幼顔のミカが会釈をして通り過ぎた。
二人をリビングに通した義父が戻って来た。
「奈津美さん、お茶でも出してあげなさい」
「あ、はい」
義父が背中を押してくれ、私はキッチンへと進んだ。
「心配ない、ただの仕事仲間だよ」
私の様子を察した義父はそう言って、戸棚から湯飲みを出してくれた。
「大丈夫です、お義父さん、座っててください」
「そう、わかった」
小刻みに手が震えて急須が揺れ、お茶が上手く注げない。これから何が起こるのかわかっていながら、私は焦り、緊張していた。
並んで座っている二人を前に、私は息を整えてお茶を出した。長い沈黙に痺れを切らし、口火を切ったのは義父だった。
「悟史、話があるのか」
「あ、うん、実は……」
悟史がお茶を一口飲んだ。
「今俺、彼女と、関口ミカさんと付き合ってて……」
「ん? 付き合ってるってなんだ」
「だからその……」
「お前は妻帯者なんだぞ、浮気してるんだろう。なぜ、その相手をわざわざ家に連れてくる必要があるんだ」
「その、実は……」
終わる、終わりだ……
私は目を瞑った。
「子どもができたんだ」
「なんだって? お、お前、何を言ってるんだ!」
義父が身を乗り出して怒鳴った。
「だからその、子供が……」
私はまるで他人事の様に、目の前の出来事を眺めていた。
「お前、子供は要らなかったよな…」
「………」
「いったいなんで浮気なんか」
今となってはどうでもいい事を義父は問いただそうとしていた。
「お袋が亡くなってから、……奈津美は俺よりも、親父の事ばかり気にかけていて……まぁ、当たり前なんだけど」
「奈津美さんのせいなのか?」
「いや、俺が悪い」
「あの、悟史さんは寂しかったんだと思います」
ミカが言った。
寂しい? 悟史、本当の寂しさを知っているの?
「会社でもなんだか落ち込んでいるみたいだったので、可哀想になって、何度か食事に誘ったりしました。少しでも癒してあげたくて、私、いつも悟史さんの側にいました……」