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ドアの隙間
第8章 ひとり
寝付けない夜が続いた。冷たい部屋に帰り、冷えたベッドに横になっても、足先が温まらないまま夜は更けていった。
いつしか浅い眠りに誘われた私は夢をみた。

夏の夜。喉が乾いた私は階下のキッチンへ向かう。

「あっ、あぁん、あっあっ……」

義父の部屋から声がする。明かりの漏れドアに近づくとそこから冷気が漂ってくる。

義母の声だろうか?
ドアの隙間から部屋を覗いた。

「………」

ソファーに座った裸の女。その膝を押し開き、陰部に顔を埋める男がいた。義父だ。

「あぁん……感じちゃうぅ……」

その甘えた声。義父の髪を撫で、義父の顔を女陰に押し付けて、腰をくねらせる女。ミカだった。

「あぁ、あぁん、お義父さんそこ、そこぉ……」

ミカは腰をひくつかせ、勝ち誇った顔で私を見た。

やめて……

声が出ない、私はただ目を見開いて固まっていた。

やめて
お義父さんやめて……

ソファに座った義父の膝にのったミカは、こちらに向いたまま、いきり立つものを飲み込んでいく。

やめて……

笑みを浮かべ、腰を上下に動かしながら、頭を反らせて義父と舌を絡ませた。
義父はミカの太腿を下から持ち上げ、突き上げた。

「…あぁっ、あんっあん…だめぇぇ……」

激しく攻められながらも薄ら笑いのミカは、私を見下すように唇を舐めた。

やめて、やめて、いやっ!

「やめてっ!」

……………

目が覚めた。 背中に汗をかいていた。起き上がってキッチンで水を飲むと、寒くて身体が震えた。汗ばんだパジャマを着替え、ベッドでクッションを抱きしめた。

「お義父さん、お義父さん………」

涙が溢れ、しゃくり上げても、ここに義父はいなかった。
声が聞きたい、今すぐに――

耐えられなかった。時間が解決してくれると思っていた。ひとりの暮らしにもすぐに慣れると思っていた、
でも孤独は解消できない。沼に沈んでいくばかりだ。

私は携帯を握りしめ、まだ覚えているあの家の番号を押した。痛いほど胸が鳴る。義父が出なかったら、すぐに電話を切ろう。義父ならきっとわかる筈だ、私が黙っていても。

「奈津美さんか、どうした」

そう言ってくれる。そしてすぐに飛んで来てくれる。なぜそう思えるのだろう。なぜそう信じられるのだろう。

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