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心掟
第3章 浹洽


入浴を済ませ脱衣所を出ると、彼女はソファに腰かけうたた寝していた。
久しぶりに会った、そこまで深い関係のない男とホテルに入ったというのに無防備過ぎやしないか、と少しばかりの怒りが込み上げる。
しかし彼は彼女を叱れる立場ではないのを十分に理解していた。
なので深呼吸ひとつ吐き、彼女の横に腰かけ彼女の細い髪へ手を伸ばした。

ソファが彼の重みでほんの少し軋む。
細い髪に触れる。
艶のある細い髪。
彼女はどちらかと言えば、ショートヘアの似合う子だ。
学生のころからミディアムヘアより長い髪を見たことがなかった為か、そんな風に思う。
でも彼女のルックスからしてみればロングもきっと似合うんじゃないか。

彼女の髪を撫でながらそんな事を考えていると、彼女が目を覚ました。

「 お風呂上がりの人の手は … 」
「 ん? 」
「 … あったかいなあ。 」

寝ぼけているのか呂律が上手く回っていない。
でも、そんなところも可愛い。

わざとか?

俺が君に惚れてた事を承知して。

「 君も入りなよ。化粧、落とさないと肌荒れるぞ。」
「 ん … あたしが化粧濃いみたいに言わないでよ。」
「 はいはい。わかったから。」

彼女は決して化粧が濃い訳ではない。
ただ彼女の綺麗な肌を気にして。
ただのおせっかい野郎だ。

彼女はふらりと立ち上がると、浴室へ姿を消した。
数分後、彼は浴室からシャワーの音が漏れてきたのを確認すると大きなベッドに潜った。


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