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心掟
第3章 浹洽
ドライヤーの音に目を覚ます。
彼女が髪をブローしているのだろう。
時計の針は午前1:30を回っていた。
退勤時に、急遽後輩に明日のシフトを変わってもらっておいてよかったと胸を撫で下ろす。
さすがにこの事態からいつも通りの出勤は、まずい。
目を閉じ、彼女の戻りを待つ。
「 出ましたよ -… 」
完全にいつもと同じ調子の彼女の声が部屋に響く。
シャワーを浴び、目が覚めた様だ。
「 あれ?寝ちゃった? 」
俺は敢えて返事を返さず彼女の行動を待つ。
彼女は部屋の照明とテレビをすべて消した。
「 … お邪魔します。」
丁寧に挨拶をすると、彼女がベッドに潜り込んできた感触が体に伝わる。
けれど、彼女の身体は彼から離れていた。
それもそうだろう。
恋人同士ならきっと彼の腕の中に入るはずだが。
彼女がもぞもぞと布団の中で身体を動かす。
ただただその感覚と音だけが彼の身体に伝わる。
もどかしい。
ふわりと石鹸の香りと、火照った体の熱が彼の方まで伝わってきた。
もどかしい。
彼女に触れたい。
ずっと想っていた彼女に。
しかしここで理性を崩してはきっと彼女はがっかりする。
さっきまでの様子を見ていれば、わかる。
彼女は俺に、そういうことを望んでいるわけじゃない。
ただ、自分の趣味を共有できそうな俺と親しくなりたかっただけ。
短時間で彼の頭の中は活発に思考を巡らせた。
そして彼女の言葉ですべてが意味の無いものになる。
「 あたしね、ずっと君に憧れてたんだよね。」
小さく彼女が言葉を漏らした。
きっと彼が寝ていると信じ込んで。
「 憧れてたの。」
彼女はもう一度言葉を繰り返す。
その言葉に彼の心臓はドクンと大きく脈打った。

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