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心掟
第3章 浹洽


甘い口づけを数分。
まるですべてが溶けてしまいそうだった。

彼女の舌先を吸い取り、リップ音と共に唇を離す。
彼女の頬は暗がりでもわかる程、火照っている。
乱れた呼吸に揺れる肩。それさえも興奮を誘う。

一瞬だけ見えた潤んだ瞳。すぐに視線を逸らし伏せ眼になる。
もっと。もっとその瞳が見たいのに。



「 好きだ。君が好きだ。」
「 ずっと好きだったんだ。」
「 だから俺より先に言わないでくれ。」
「 君が好きだ。誰よりも、一番。」


溢れ出た言葉。ただただ好きだ、と。
それ以外に、言葉なんて見つからない。
一目惚れなんだ。仕方ないじゃないか。


「 ふふっ 」

彼女が可笑しそうに笑みを零した。
頬を染めながら。口元に手を添える。
口元に手を添えるのは彼女の癖だ。

「 あたし、まだ何も言ってない。」

楽しそうに頬を緩め唇を動かす。

「 なのに、君、本当。弾丸飛ばし過ぎだよ。」

再び、ふふっと笑みを零す彼女。
その言葉で我に返った彼はつられて笑みを零した。

「 … 確かに。俺ちょっと突っ走りすぎた 」

「 ちょっとじゃないよ。だいぶね。」

そう言うと彼女は真っ直ぐに視線を絡めた。
普段は自分から目を合わそうとしない癖に。


「 … 嘘じゃない? 」


彼女の瞳には、まさに“ 不安 ”の二文字が並んでいるかのようだった。

それもその筈。
俺は卒業してから一度も彼女と連絡を取っていなかった。
取ろうともしなかった。
自分から彼女を求めたことは一度しかなかった。
そんな奴にいきなり告白されても。
ましてやこんな状況だ。
そりゃあ不安になるだろう。

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