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恋愛無双ーレンアイムソウー
第5章 12月中旬
撮影日から一週間以上経っていた。
ーーー倉田さん、わざわざ
メイキング風にしてくれたんだ…
世に出る事はない
たった一つの映像だけど
思い出として残るのは嬉しい。
忙しい中で作業してくれたであろう
倉田やアシスタントの姿を思い浮かべて
ひっそりと感謝する。
「結子よく似合ってるね~
特にドレスが良い感じぃ~!」
「そうねぇ。元々の素材は良いんだから
いつもこうしとけばいいのにねぇ」
「素材が良いのは母さんと俺のおかげだな」
ーーー誉められるのって慣れないな。
そう思いながら結子は
冷蔵庫からパック牛乳を取り出し
そのままラッパ飲みをする。
父親は牛乳嫌いだから
パックで購入しても結子専用。
腰に手をあてて少し仰け反り
銭湯での湯上がりスタイルだ。
「ぷは~」
視線を感じて振り返ると
三人は同時に溜め息を吐いた。
「何?」
結子がぶっきらぼうに尋ねると
父親が目頭を押さえた。
「ううっ……」
「パパりん、泣かないでっ!」
「あ~あ、泣いちゃった~」
「だから何なのよ?」
小さな劇団のヘタクソで
安っぽい演技を見せられているようで
寝起きの結子はイライラモード。
ーーー言いたい事は分かる。
どうせ“何でこんな娘に…“的な事を
言いたいんでしょうが。
「いつから女子力がなくなったのか…」
父親が嘆く。
ーーーほらやっぱり。
「パパりん、大丈夫よ!
ゆいこりんは今はちょっとアレなだけで
アレはすぐアレになるから!」
蘭がなだめる。
ーーーアレアレ言い過ぎて
よく分かんねーよ。
「でもさ~女子力はあってもなくても
実際は関係ない気がするな~。
一番重要なのはやっぱ性格だよ~」
恵が意見する。
ーーーお前が言うか。
一番性格が悪いお前が言うのか。
性格が一番と言うのには一理あると思う。
だが性格だけ良くて上手くいくほど
世の中甘くないのが常だ。
おそらく大抵の男性は
一に顔、二に性格で
女性を選ぶだろうから。
ーーーで、三に家庭的なんだろうよ。
けっ、気取ってやんのっ。
世の男性に悪態を吐きつつ
三人へ視線を向けると
再びDiscを見ていた。
急に静かになるはずだ。
ダイニングテーブルの椅子に座り
携帯を触るとメールが届いていた。