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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会


それから30分の休憩が終わり、残り2時間の勤務も終えると、再び事務所の中に戻ってきた。

「ふぅー」と息を吐き、エプロンの後ろのボタンをパチパチと外しながらパソコンで打刻する。

カフェって、結構大変。

駅前だから客は多いし、ピークになると下げられたトレーの片付けが追いつかなくなるし、テーブルを拭きに行くも、席がありすぎてどこから客が帰ったかよくわからないし。

でも、新しい仕事を覚えるのは結構楽しい。

それに、汚れてないこの世界で働けることが嬉しい。

給料は高くない。仕事は覚えることが多い。失敗したら注意される。けど、ちゃんとした仕事。

それだけで私は幸せだった。自分自身を少しずつ変えていけるような気がした。


その日私が仕事を終えたのは午後6時で、同じ時間に上がる人が他にふたりいた。ふたりとも若そうな女の子。

「お疲れ様です」

「お疲れ様でーす」

エプロンを外して靴を履き替えていると、そのふたりの女の子が私に声をかけてくれた。

「お疲れ様です」

「新人さんですよね?社員さんですか?」

「はい、そうです。来宮って言います、よろしくお願いします」

「私、バイトの中原舞です。今大学2年生で、ハタチです」

ハタチか、若いなぁ…。大して変わらないのに、そう感慨深く感じてしまった。

「本田瑞稀です。私もハタチで、舞と同じ大学なんです」

ふたりとも明るめ茶髪で、人のことは言えないけど濃いめのメイクで、なんというか、一言で言うとキャピキャピしている。まるで私の夜の顔。

まあ、ふだんはそんなしゃべる方じゃないし、どちらかというとサバサバした性格だと思うけど。



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