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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

それからあっと言う間に1ヶ月という時間が流れ、私は無事研修期間を終えた。
不安に思っていたドリンク30種類も完璧に覚え、レジもわりと早く打てるようになった。
店の人たちとも馴染めてきて、歓迎会で一緒に飲んだり、個人的に一緒に飲んだり、結構楽しい毎日を送っている。
そして昨日、店長がこの西岡駅前店での最後の仕事を終え、集まれる人たちで集まって送迎会をしたところだ。
つまり今日から新しい店長がやってくる。
その日は、私と後輩の中原さん、そして店長がオープンからの出勤だった。オープンというのは、開店のための準備からはじめるシフトで、朝6時半に出勤しなければならない。一番キツイ。
眠たい目をこすりながら、昨日持って帰った鍵で店の裏口から中へと入る。
店にはまだひとり。店長と中原さん、どっちが先に来るかな?
事務所でエプロンに着替えながら、店長はどんな人だろうと勝手にイメージする。
名前はたしか、音峰 類。男なのか、女なのか、名前だけでは判断できない。
まあ、一番身近で知っている”類”という名前の人は、男だけど。
同じ歳くらいの女性店長だったらいいな…なんて欲を抱きながら、着替え終わって更衣室から出ると、同じタイミングで事務所のドアが開いた。

