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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

それから中原さんも来て、3人で開店準備をはじめたのだが
「来宮、テラス席の配置を教えてもらっていいか」
「は、はい」
彼は仕事の話しかせず、私に気づいたような様子は一切見せない。
「タイルのマス目に合わせて並べてください。各テーブル毎2タイル分間隔を開けて…」
「なるほど。ありがとう」
「いえ…」
そして彼は真面目な店長だ。早朝にもかかわらずキビキビと仕事をこなしている。
もう、私も気にしないようにしよう…。
午前7時になり、店を開けると、数人のサラリーマンが同時に店に入ってくる。
「ブレンドコーヒー」
「ブレンドコーヒーですね。240円でございます」
私がレジ打ちをしていると、後ろで店長がブレンドコーヒーを淹れてくれる。
「お待たせいたしました」
そしてすぐ横で、ブレンドコーヒーの入ったマグカップをトレーに乗せて客に提供する。
それはあまりにも近くて、私の腕に彼の肘が当たってしまう。私は思わず胸をドキッとさせてしまったのだが、彼の横顔はピクリとも動かない。
だめだ、さっきから私ばっかりドキドキしてる。もちろん、ドキドキとは胸のときめきとかそういう意味合いではないが。
気にしない気にしない…。

