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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

その週の金曜日、午後7時。
「桃さん桃さん、髪の毛変じゃないですか?」
「私のメイクもチェックしてくださいよ〜」
「ハイハイ、ふたりとも可愛いよ」
両サイドの後輩ふたりを棒読みで褒めながらガヤガヤと騒がしい夜の街を歩く。
中原さんも本田さんも、いつも以上に気合が入っていて、髪の毛も綺麗にまとめられたアップスタイル。心なしかいつもより露出の多い服を着ているような気がした。
なにせ、今日は新店長の歓迎会だから。
予定のあったカフェの店員男4人女4人で、一緒に飲みに行くことになったのだ。側から見ると合コンっぽい。ふたりが張り切っているせいで。
「部長の左手の薬指、結婚指輪がないんですよ。独身ってことですかね?やばーい!!」
「何言ってんの、舞彼氏いるじゃん。ここは彼氏のいない私に譲るべきでしょ」
「瑞稀だって、サークルの先輩といい感じって言ってたじゃん」
「だって店長の方がハイスペックなんだもん」
「わかる〜!!」
ふたりは本当に嬉しそうに話す。
私は店長が来てからのこの一週間、地獄のような日々を過ごしてきたっていうのに。

