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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

予約していた店に入ると、店長の両サイドは、中原さんと本田さんにバッチリキープされていた。
「店長、ビールのおかわりいかがですか?」
「焼き鳥もありますよ?食べます?」
「ありがとう、じゃあどちらもいただくよ」
彼は女性慣れしているのか、両サイドからのアタックにひるむことなく余裕の微笑みだ。
彼の大人な対応にふたりもどんどん夢中になっている。
そんな彼らの様子を見て、私はなんだかモヤモヤしていた。
彼はたしかあの頃、ひとりの方がいいと言っていたのに。だから彼女もつくらないし結婚もしないと言っていたのに。
満更でもなさそうだし、突き放す様子もない。
別にヤキモチなんかじゃない。客に恋愛感情を持つなんてありえない。彼に特別な感情なんて持っていなかったはずだ。
この一週間だって、バレませんようにって、そればかり祈っていた。彼と関わりを持つことなんて望んでいない。
ただ、彼は少し変わった客だったから……あの頃、他とは違う彼が来るのを若干楽しみにはしていたけど。
あの頃は。
「来宮、そこのサラダをとってもらえないか?」
「あ、はい」
彼に来宮と呼ばれるのにはまだ慣れない。
彼が店長として西岡駅前店に来てから私はあの頃のことを思い出してばかりだ。腹立たしい。
もう、今度こそ、彼のことを気にするのはやめよう。

