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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

それから部長と離れた席で飲み続けること2時間。焼酎に手を出しはじめた私はほろ酔い状態を超えていた。
「来宮さん、今日はよく飲むわね」
隣に座っていたひとつ年上の先輩、桐沢さんが、「ふふっ」と色っぽく笑いながら私の顔を覗き込む。
彼女はクールで、サバサバしていて、カフェの中では一番絡みやすい存在だ。お姉さんのように慕っている。
「そんなに飲んでないですよー」
「ビール2杯米2杯で、そんなに飲んでないとは言わないの」
「へへっ」
「全く、酔うと普段のクールな印象崩れまくりなんだから」
「桐沢さんは酔ってもクールで美人で素敵です、大好きです」
「ハイハイ、ありがとう」
彼女は呆れたように笑いながら私の頭をヨシヨシと撫でた。
そして甘い卵焼きに手を伸ばし、パクッと口にする様子を横から眺める。すると、
「桐沢」
桐沢さんが、私の聞きたくない声で名前を呼ばれた。無論、店長だ。
「席、代わってもらえないか?」
「え?別にいいですけど?」
席を、変わる……?
それはつまり、店長が私の隣に来るという意味で。
どうして?何か用でもあるのだろうか?どちらにしたって嫌だ、絶対嫌。無理。

