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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会


「顔、赤くなってる」

「そんなこと、ないです…」

仕事中、営業用の優しげなスマイルばかりを見せる店長が、意地悪く口角を上げる。

はじめて見せる表情に不覚にもキュンと胸をときめかせてしまった。

……ううん、私はこの顔を知っている。あの頃彼と同じだ。

意地が悪くて、私を弄び振り回すのがうまい彼。

店で働きはじめた頃の10代だった私を、大人にしてくれた彼。大嫌いだったあの店で、唯一私をドキドキさせた彼。

あの頃はたぶん、私は彼のことを気にしていた。

彼のことが……好きだったんだと思う。


「来宮は、まだ新人だと聞いたが」

「はい、まだ1ヶ月ほどです」

「まあ1ヶ月といえど、西岡駅前店の先輩であることには変わりないな。いろいろ教えてくれ、来宮先輩」

「ふふっ、来宮先輩って」

真顔で言うからなんだかおかしくて、つい笑ってしまう。こんなにお茶目な人だったっけ?おかげで少し心が落ち着く。

けれど、そんな穏やかな気持ちは長くは続かず。

「24歳で働いて1ヶ月ということは、それまで別の仕事をしていたということだろう?」

「え……そ、それは……」

別の仕事。もちろんヘルス嬢。

背中に変な汗が流れる。

それ以上何も聞かないで。何をしていたかなんて聞かないで……。

けれど彼は、そんな私の穏やかな焦りを遥かに超え……



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