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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

「店長〜、桃さんと何コソコソ話してるんですかー?」
声を潜めて話していると、本田さんたちが私たちを見て唇を尖らせた。
まさか言ったりしないよね?私が元ヘルス嬢だったなんて、さすがに言っちゃダメだって常識くらいあるよね……?
「いや、実は来宮が……」
嘘でしょ……言う気なの?あり得ない、やめてよ。
「ちょっと、店長!!」
私は彼を止めようとガシッと腕を掴んだ。
するとそんな私を見て、彼は悪そうにニヤリと笑う。でも、目が笑っていない。怖い……。
私は最悪の結果を覚悟した。けれど、
「来宮が……飲み過ぎているから大丈夫かと思って」
「え……」
「大丈夫か?よかったらタクシーでうちまで送るが」
なんだ、びっくりした……何を言い出すかと思えばそんなことか。
本当に彼は私の心臓に悪いことしかしない、わざとなのだろうか。どちらにしろ彼が憎い。
というか今のうちにしっかり口止めしておかなければマズイ。いつ口を滑らせるかわからない。
「あの、店長……私飲みすぎちゃったみたいです。お言葉に甘えて、タクシーで送ってもらっていいですか?」
もちろん、実際に送ってもらいたいわけじゃない。ただ、とにかく彼とふたりになりたい。話し合わなければ。

