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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会


「わかった。じゃあすまないが、俺たちは先に失礼させてもらう」

「ちょっと店長!本当に帰られるんですか?!」

「悪いな、またゆっくり飲もう」

彼は伝票を持ち私より先に立ち上がった。

「立てるか?」

そう言って優しく私に手を差し出す。

「……ありがとう、ございます」

私は恐る恐る差し出された手をとった。

力強く手を引かれ私は彼にもたれかかるような形で立ち上がる。慌てて彼の手を離し彼と距離をとった。


「今日は歓迎会ありがとう、これからよろしく頼む、じゃあまた。

来宮、行くぞ」

「……すいません、お先に失礼します」

後輩ふたりの鋭い視線にひるみながらも私は店長とその場を後にした。


彼が会計を済ませている間、私は先に店の外に出る。

火照った頬に冷たい風が気持ちいい。

「待たせたな、来宮」

「あ、いえ、ご馳走様です…」

どんな顔をして彼を見ればいいのかわからない、どう言い出せばいいかわからない。

本当に厄介なことになってしまった。


「タクシーを捕まえるなら大通りまで出た方がいいかもしれないな。歩けるか?無理そうなら電話で呼ぶが」

彼はというと、何事もなかったかのように私に話しかける。

別に歩けないほど酔っているわけではない、どちらかというと彼にヒヤヒヤさせられて酔いなんてすっかり覚めてしまった。



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